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件名:「台湾の声」【台湾紀行】玉山古道−余話

西豊穣 台湾紀行古道シリーズ

玉山古道−余話
              西 豊穣

前回の記事を書くに当り、昭和8年(1933年)、台湾山岳会発行の五万の一の「新高
登山地図」を参考にした。台湾の幾つかのサイトから自由にダウンロード出来る(注1)。

その地図の左下に「D. by N. Kurokawa」の記載があるのを見付け、すぐに船橋市在
住のK氏に連絡した。K氏とは「台湾原住民族との交流会」(注2)を通じ知り合った。
もう七十歳を越えておられるが、昨年日本から一人で台湾の然る山岳会の募るツアー
に参加され、玉山登頂を果たされた。以下は私のK氏に対する問合せのメールである。

「さて、そろそろ次の古道の記事を書こうと色々考えていて、玉山古道を次の題に
 する積りです。読者に玉山登山を薦める積りはなく、玉山をどこから眺めると一
 番良いか?といったようなことを主眼に書こうと考えています。今月中に上梓す
 る予定でいますが、台湾のサイトを見ておりましたら、以下の地図を自由にダウ
 ンロード出来る事が判りました。早速ダウンロードして仔細に眺めておりました
 ら、地図の一番下に、「D. by N. Kurokawa」の記載がありました。これは黒川様
 のご尊父のことでしょうか?この地図は、そのコピーを黒川さんが祝山を訪ねた
 時に持参したものと同じでしょうか?違うのであれば、私がダウンロードしたも
 のをメールでお送りします。いずれにいたしましても、便利な世の中になったも
 のだとつくづく感じ入りました。現在の登山道との違いが明確に判りますので、
 全く私にとっては素晴らしい地図です。

 今後冬に向かいますので、お身体の方にはくれぐれもご留意くださるようお願い
 申し上げます。」(2007年12月2日)

これに対し、K氏からいただいた返信は以下の通りである(旧漢字は現在の当用漢字に改めた)。

「ご無沙汰いたしております。実は私も西さんに報告したいことがあるので、メー
 ルをしようと考えていたところです。西さんからご連絡あった地図についていろ
 いろ調べたいことがありましたので、先週1週間台湾に行ってきたところです。

 ご連絡あった「新高登山地図」は平成16年の2月に玉山国家公園管理処のホーム
 ページを調べている時に見つけました。以前から、父が新高山の地図を作成した
 ことを兄から聞いていたので、かなり注意して見ていたのですが、あのホームペ
 ージはなかなか良くできていて、拡大、移動ができるので、左下部分を拡大して
 D.by N.Kurokawaを見つけた時には思わずパソコンの前で声をあげてしまいまし
 た。サイトの説明にこの地図は 玉山国家公園管理処典蔵と記されているので、
 いつかここに出かけようと考えていました。

 玉山国家公園管理処は水里にあることを調べて知っていましたので、昨年玉山に
 登山した後、一緒に登山した人達と水里で夕食をしながら「ここにある管理処に
 私の父が作成した地図があるのだが」とつぶやいたとき、「今日は休みだし、時
 間も遅いので見るのは無理ですよ、また来なさい」と慰められ、次の機会を狙っ
 ていました。今年の夏から10月にかけて、いろいろあったので、台湾に出かける
 時間がなく、結局先週になってしまいました。

 11月27日6時に台中から総達客運のボロバスで2時間半かけて水里にたどり着き、
 玉山国家公園管理処を訪れ、来意を告げたところ、解説教育課の親切な女性がい
 ろいろ調べてくれました。結論として、台北の中央研究院がこのホームページを
 管理していて、その地図もそちらにある筈だと、中央研究院の担当者を紹介して
 くれました。29日台北の南港区研究院路にある中央研究院計算中心でこのホーム
 ページを担当している廖氏に会い、お互いに大感激で話が盛り上がりました。
 (これは少し嘘で、たよりない中国語と英語のチャンポンのたどたどしい会話で
 した)廖氏から地図のCDと大判のコピーをもらい、さらに彼のボスである人にも
 紹介され、今後も連絡を取り合いましょうと言うことで、大変有意義な訪問でし
 た。

 ところで、本来の目的は父の地図のオリジナルに対面することなのですが、廖氏
 はこの地図のコピーデータを引き継いだだけで、本当のオリジナルの地図がどこ
 にあるかは少し時間をくれたら調べることができると言うことでした。CDデータ
 は8.9メガありますので、メールで送れるかどうか分かりません。別のメールで
 送信してみます。父の地図については以上のとおりです。

 西さんにご連絡したかったことは実はもう一つあります。一昨年阿里山を案内し
 ていただきましたが、あの時祝山で写した父の古い写真をお見せしました。あの
 祝山三角点を祝山観日楼と思い、西さんにも調べていただき、結局見つけること
 ができませんでした。昨年西さんからいただいた台湾内政部土地測量局の地図を
 あの後じっくり眺めていたら、観日楼とは別の地点に祝山2,489メートルがあるの
 を見つけました。こここそ写真の三角測量櫓のあったところだと考え、この地点
 に立つことを今回の旅行の二つ目の目的としていました。

 水里を訪問した後、阿里山に入り、28日早朝祝山に列車で到着しましたが生憎の
 霧で何も見えず、他の観光客は祝山駅の階段を上がった地点でお土産屋の親父の
 説明を聞かされ、西さんと一緒に登った観日楼にも行かず帰りの列車の時間まで
 ぼんやり時間を過ごしていました。阿里山のホテル(1泊600元)で貰った新しい
 案内図には、祝山駅から観日楼に行く道とは丁度逆の方向に眺望台の記載があり、
 ここが内政部地図の祝山の地点と一致するのではないかと思います。お土産売り
 の小母さんに尋ねると、この道は途中で進入禁止になっているとのことでしたが、
 無視してその道を辿ってみました。眺望台に行く道で案内図にも載っている道な
 ので、歩きやすく、10分程度で到着しました。霧が深く何も見えませんでしたが、
 晴れの日なら眺望の良いところだと想像できて、たぶんここが祝山の頂上だと思
 えます。眺望のために木製のバルコニーができていましたが、この足元が崩れて
 いて、斜めになっていましたので、来る途中に進入禁止の看板が立っていた理由
 だと分かりました。これで一応目的は達したと思いながら、急ぎ足で祝山駅に戻
 り、他の観光客と一緒に帰りの列車で阿里山駅に戻ることができました。有効に
 時間が使えたのも一昨年に西さんに案内していただいたお陰で、土地勘があった
 ためだと心から感謝いたしております。

 この後、阿里山から嘉義県公車に乗り、時期はずれの台風で崩れた道を走り、嘉
 義に出て、台湾高鉄を利用して台北に行き、中央研究院に出かけたのですが、こ
 こで祝山の話をしたら、現在の内政部地図でも三角点の表示があるのだから、眺
 望台の下に三角点があるかどうか調べてみましょうと親切なことを言ってくれま
 した。報告は以上のとおりです。タイミングよく西さんからメールをいただき、
 不思議な気がしています。」(2007年12月3日)

K氏から教えていただいたご尊父の経歴は以下の通りである。黒川直(くろかわ・な
お)、明治23年(1890年)東京生まれ。陸軍参謀本部陸地測量部に技手として勤務。
その後朝鮮総督府、台湾総督府に勤務。台湾総督府時代は内務局地理課勤務。昭和12
年(1937年)に台湾拓殖株式会社に移る。どの時代も地形測量、地形図作成の業務に
従事。

K氏の、ご尊父の足跡と業跡を辿る姿には心打たれる。

台湾の山に登るとその頂上にあるのは大概日本時代に設置された三角点である。台湾
の地が東西南北、正確な位置と広がりを以って近代史に立ち顕れたのは、K氏のご尊
父のような測量技師の努力に拠ってであることを台湾の山に登る度に思う。当時の測
量技師が如何に苦労して台湾の山々を測量して歩いたかは、鹿野忠雄の「山と雲と蕃
人と」を読むとよく判る。台湾人は何故か山頂に辿り着くとまず三角点に手を触れる
人が多い。何かのおまじないであろうがその理由を聞いたことは無い。(終わり)

(注1)例えば、以下のサイトからダウンロード出来る:

「玉山国家公園電子文化与自然資源地図」 http://gis210.sinica.edu.tw/ysnp/ecai/index.htm

(注2)「台湾原住民族との交流会」に関しては以下のサイトを参照:
http://www.taiwanembassy.org/ct.asp?xItem=42086&ctNode=3588&mp=202




西豊穣 ブログ「台湾古道〜台湾の原風景を求めて」
http://taiwan-kodou.seesaa.net

西豊穣 台湾紀行古道シリーズ バックナンバー

2008/01/02 玉山古道(新高山歩道)
http://www.emaga.com/bn/?2008010001769565014831.3407

2007/06/16 蘇花古道−3 
http://www.emaga.com/bn/?2007060069026465008515.3407

2007/06/15 蘇花古道−2
http://www.emaga.com/bn/?2007060066088784011088.3407

2007/06/14 蘇花古道−1
http://www.emaga.com/bn/?2007060063416681010425.3407

2006/11/26 恒春卑南古道(阿朗伊古道)−3
http://www.emaga.com/bn/?2006110088583432011570.3407

2006/11/19 恒春卑南古道(阿朗伊古道)−2
http://www.emaga.com/bn/?2006110062641083010527.3407

2006/09/30 恒春卑南古道(阿朗伊古道)−1
http://www.emaga.com/bn/?2006090110198233009044.3407

2006/07/05 六亀特別警備道付記‐竹子門発電所
http://www.emaga.com/bn/?2006070011116401005020.3407

2006/07/03 六亀特別警備道(扇平古道)
http://www.emaga.com/bn/?2006070005430276009918.3407

2006/03/06 浸水営古道
http://www.emaga.com/bn/?2006030022994333010714.3407

2005/12/23 崑崙拗古道
http://www.emaga.com/bn/?2005120083972080008877.3407

2005/04/26 八通関古道
http://www.emaga.com/bn/?2005040084791224010815.3407

2005/02/25 霞喀羅古道(石鹿古道)
http://www.emaga.com/bn/?2005020083026676007324.3407

2005/01/06 能高越嶺古道
http://www.emaga.com/bn/?2005010010046551008909.3407


『台湾の声』http://www.emaga.com/info/3407.html



  
 


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