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件名:「台湾の声」【講演録】日本人を惑わす「一つの中国」なる虚構

下の講演録は、『道の友』平成16年12月号(発行:不二歌道会)から転載です。(原
文は正仮名遣い)

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日本人を惑わす「一つの中国」なる虚構


                                     台湾研究フォーラム会長 永山英樹


 去る平成十六年十一月七日(日)、文京区民センターに於て、メールマガジン「台
湾の声」・台湾研究フォーラム共催、日本李登輝友の会の後援により、「台湾は中国
じゃない!」時局問題講演会が開催された。本文は登壇者永山英樹氏講演の抄録で
ある。文責は編輯部にある。


  「一つの中国」の定着

 「一つの中国」という言葉は、一般社会で定着しています。そのために国民は、隣
の国、台湾に対する誤った情報を押し付けられていると思います。
実例を挙げますと、最近NHKのニュースでは台湾を含めた中華人民共和国の地図を
放映した。また市販されている世界地図、学校教材として使われている地図などで
も、台湾が中華人民共和国の一部として描かれている。つまりメディアも学校教育も
嘘を教えているということです。しかも驚くべきは、そういった嘘を押し付ける側も
押し付けられる側も嘘を嘘だとは思っていない。何の疑問も違和感もない。何故かと
いうと、「台湾は中国の一部である」と刷り込まれ、そう思い込んでしまっているか
らです。また今は中国の一部ではなくても、その内一緒になるのだろうと。

  中国の台湾領有の根拠

 台湾が中国の一部であるとの主張が、科学的、法的根拠とするものには、一体何が
あるのか。これはせいぜい挙げられたとして、「昔は台湾は中国の一部であつた」、
だから「台湾は中国固有の領土だ」といふ位です。それを言うのであれば、台湾を一
番最初に領有したのはオランダですから、オランダの固有領土となるでしょう。ま
た「同じ民族だから、一緒になるのは当たり前だ」とも言ひますが、誰がそのような
ことを決めたのか。台湾は中国の一部だということは、台湾人に対して非常に失礼な
事です。
 その実害はすでに、在日台湾人に及んでいます。外国人登録証の問題です。日本
では、台湾人の国籍は、法的に中国とされている。これはどういう事か。例えば、
我々がアメリカに行った時に「お前は日本人じゃない、韓国人だ」と言われるのと同
じ事です。これは大変な侮辱であり、人権侵害であります。 しかし外国人登録証を
扱っている日本政府は、その事に対して改める気が全くない。
さらに、現在中国は台湾に向けたミサイル配備を続けている。この様な事を、アメリ
カが近隣の無抵抗の小国に行つたら、国際世論や日本政府も黙っていないでしょう。
しかし同じ事を中国がやっているにもかかわらず、誰も何も言はない。せいぜい当事
者同士、平和的に話し合って解決して下さいと、希望を表明するだけです。何故か。
それは台湾が中国の一部であり、この問題は中国の内政問題であると思っているから
です。つまり「一つの中国」という幻想に惑わされているからです。
 しかしそれでいいわけがない。東アジア地域に於いて、中国と台湾の問題という
のは、最も緊要な問題であるわけです。これに対して日本人が一つの中国といふ概念
にとらわれているために、正しい認識を持てない、正しい判断を持てないでいる。

  「一つの中国」の原則と強要

 この一つの中国の原則というものは、誰が言いだしたのか。四年前に中国政府が発
表した『台湾白書』の定義はこうです。「中国人民が中国の主権と領土保全を護る正
義の闘争を進めるなかで形成された原則だ」と。つまり台湾を守るための闘いの中で
生まれた原則だというのです。闘争というからには相手が必要ですが、それはアメリ
カです。それからアメリカの走狗である日本です。つまり、アメリカが中華民国を庇
護して来たため、今の分裂状態があると。そして現在日米安保があるから、なかなか
中国が侵攻できない。こういふことを言いたいわけです。ですから彼らは「日本とア
メリカは二つの中国を造りだす陰謀を持っている。台湾独立の陰謀を持っている」と
いう言い方を盛んにします。だから「中国は一つである」と認めることを、特に日米
に対しては強要します。先日のパウエル米国務長官の発言(註:北京で「台湾は国家
としての主権を享受しない」「(台湾と中国)双方が平和的統一に向け道を探るべき
」と表明)についても、そういった流れの中で言わされたものなのです。日本政府も
同じで、再三にわたって中国に対し、「我が国は一つの中国の政策を堅持する」と表
明させられています。
 つまり一つの中国の原則というのは、中国にとっては台湾を侵略・併合することを
正当化するためのスローガンであるわけです。
 一方、もう一つの中国政権である中華民国は、こちらも一つの中国という原則を主
張してきました。こちらの言う中国は、中華民国をさすわけですが、この国にとつて
の一つの中国の原則は、台湾統治を正当化する根拠です。確かに、李登輝さんは二国
論を打ち出して、一つの中国というものを事実上否定しました。しかし法的には、中
華民国憲法がある限り、一つの中国の原則を放棄する事はないわけです。台湾人にと
っては非常に迷惑な問題なのです。
 このように、二つの中国は、台湾イコール中国という意味で一つの中国の原則を掲
げているのです。
では、世界ではどのように認識しているかというと、やはり「中国は一つ」であると
いう立場をとっています。では中国とはどこかというと、中華人民共和国を承認して
いる国は、中華人民共和国が中国。中華民国と国交を結んでいる二十数カ国は、
中華民国が中国です。ところが、ここで注意しなければならないのが、どの国もそのほとん
どが、台湾が「中国」の領土であるとは承認していないという事なのです。

 政府承認にすぎない「一つの中国」

 これはどういうことか。例えば日本政府は昭和四十七年に日中共同声明で「中華人
民共和国が中国の唯一の合法政府であることを承認する」と表明した。ところが台湾
帰属問題に関して、「台湾は中国の一部である」といふ中国の主張に対して、「理
解し、尊重する」と言っただけで、承認するとは言いませんでした。何故なら二つ
の「中国」以外の国々にとって、一つの中国というものは、台湾の帰属先の問題では
なく、「中国」の政府承認の問題だからです。つまり国際法でいう一国一政府の原則
の問題なのです。これはどういう事かと申しますと、中国において政府は一つしか承
認出来ないということなのです。広大な中国大陸を統治している本物の「中国」政府
は俺だと主張している所が二つある。中華民国と中華人民共和国です。この二つに対
して世界は、「我が国は中国の政府は一つしか承認しません」というのが、一国一政
府の原則なのです。

  法的根拠のない「中国」の台湾領有

 それでは何故各国は、台湾については「中国」の領土であると承認しないのでしょ
うか。簡単に言いますと、そう考えていないからです。
 台湾の帰属先の問題で、少なくともはっきりしている事は、第二次世界大戦終結ま
では、日本の領土であったということです。日本の台湾統治について、よく「台湾占領」
といいますが、これは間違いです。日本は日清戦争の結果、清から台湾を貰った
のです。国家間で領土をあげるとか貰うとかいう行為は、必ず国際法に拠るべきで、
日本は明治二十八年の下関条約に基づいて、清から台湾の割譲を受けたわけです。
清から言わせると、日本に台湾をあげたわけで、あげた物は最早自分のものではなくな
ったのです。
 ところが現在中国政府は、台湾は自分のものと主張しています。ということは、日
中間で台湾受け渡しの何かしらの条約があるはずです。そしてそれが「中国」の台湾
領有の法的根拠になるはずですが、それは一体何か。
 これについて、中華人民共和国も中華民国も、「カイロ宣言」と「ポツダム宣言」
だと主張します。この「カイロ宣言」とは、大東亜戦争中の昭和十八年十二月、
米・英・中三国の首相が会談をし、そこで発せられた宣言ですが、そこでは、「日本
は台湾を中国に返還しなければならない」ということが謳はれているわけです。その
後日本は昭和二十年八月に「ポツダム宣言」を受諾しまが、「ポツダム宣言」には
「日本は「カイロ宣言の条項を正確に履行しなければならない」と謳はれています。
つまり日本はポツダム宣言の受諾を通じてカイロ宣言の約束を受け入れ、それによっ
て日本は台湾を中国(当時は中華民国)に返還する法的義務を負ったと、中国人たち
は主張しているのです。
 事実、中華民国国府軍は終戦後、たまたま連合国の命令で、台湾を占領しました
が、そのまま昭和二十年十月、台湾は中国であると「祖国復帰」を宣言して統治を開
始しました。その後、中国大陸では実質上、昭和二十四年に中華民国が消滅します。
そして中華人民共和国が中華民国に代わって台湾を含む全領土を継承した。だから台
湾は中華人民共和国の領土であるというのが、中華人民共和国の主張です。一方中華
民国の方は、昭和二十四年以降も中華民国が台湾を有効に統治し、今日まで領
土として存続していると主張しています。
 しかし、これらの主張はデッチ上げなのです。カイロもポツダムも「宣言」と言え
ば条約のように聞えますが、実際、カイロの方は、何の名称も持たない単なる三国首
脳のプレスリリースでした。またポツダム宣言も、正式には「ポツダム布告」であ
り、法的効力は持ちません。つまり、「中国」には台湾領有の法的根拠など無いとい
うことになるのです。
 では、台湾の帰属先は国際法上どうなっているかといえば、それはサンフランシス
コ講和条約を見なければなりません。そこでは、日本は台湾に関する主権を放棄する
ことが取り決められています。それにより台湾は日本の領土ではなくなりましたが、
代わってどこの国に帰属するかも決められなかつた。つまり帰属先未定のまま残され
たわけです。中国が何といおうと、これが厳然たる法的事実なのです。
 では台湾の帰属先が未定であるならば、どうすればよいか。国際法上の人民自決の
大原則があるわけですから、台湾人自身が決めればいいのです。しかしそれができな
いできたのは、そこに中華民国の亡命政権が居座っていたからです。この台湾支配は
何ら法的根拠もない非合法なものです。李登輝さんが「中華民国は存在しない」と言
っていますが、このような意味も含んでいます。

   中国の巧妙な戦略

 台湾の帰属先未定など認めたくはない中華人民共和国は、「カイロ宣言」を振り回
す一方で、日中共同声明を台湾領有の法的根拠に仕立て上げようとしました。そこで
中国は日本に対し、この声名に「台湾が中国領と承認する」旨を明記させようと要求
しましたが、日本は断ります。何故なら、すでに日本は台湾の領有権を放棄してお
り、自分の島ではないものを、どこ国の領土であると言う権限などないからです。
 この「台湾がどこのものとは言えない」というのが、台湾の帰属先に関する日本の
公式見解です。これは他の国も同じです。だから各国は、台湾が中国の領土だとは言
えないのです。
 しかしそれでも日本は、日中友好の見地から、中国が台湾の領有を主張することに
は敢えて反対しないということにし、そこで例の「理解し尊重する」という言葉を使
った。ところが中国は、「日本は中国の主張を理解し尊重した。台湾は中国のもの
だ」と声を大にして宣伝するのです。これが中国外交のやり方です。
 そして世界に向けては、あくまでも「カイロ宣言」を強調し、「中国は一つ」の既
成事実化を図っているのです。数年前、ロンドンで国際法の会議がありまして、この
事が問題になりましたが、殆どの学者がカイロ宣言によって、台湾は中国に帰属した
と信じていたといいます。
 中国の戦略は嘘であれ何であれ、大声で叫びつづけることです。そしてその戦略は
見事に奏功し、「一つの中国」なる誤解は、すっかり国際社会に定着したのです。

  蔓延する日本人の臆病者心理

 日本政府は戦後一貫して「一つの中国」政策を堅持しています。日中共同声明まで
は中華民国が中国、それ以後は中華人民共和国が中国です。そのため、日本国内で
「一つの中国」というと、誰が聞いても台湾と中国は領土的に一つだと誤解し、混乱する
訳です。
 それでは何故政府は「一つの中国」といふのか。これについては、昭和三十九年に
佐藤栄作首相がこう言っています。「国府も中共も一つの中国、一つの中国といふ
から、我が国も仕方なくそれに付き合って言っているのだ」と。昔から日本人は中国
人のわがままに振り回され、混乱してきたのです。
 その混乱の中で生まれた一つの大きな産物は、最初に申しました、中国地図なの
です。中国と台湾に別々の政府があることは、たいていの日本人は知っています。し
かし政府が「一つの中国」を言うものですから、地図を作る会社は中国と台湾を同じ
色にしてしまうわけです。それでもまだ中華民国を承認していた時代はよかった。一
応中華民国と中華人民共和国の間には国境線が引かれていたからです。いかに中華民
国を承認しても、さすがに大陸までも中華民国という馬鹿なことは言わなかったわけです。
 しかし中華人民共和国を承認してしまうと、これが変りました。国境線を地図の上
から消して行ったのです。これは何故かというと、もう中華人民共和国への媚びとし
か言えません。もし中国と台湾の間に国境線を引いたままだったら、中国が怒る。日
中友好声明に反すると言われることは、目に見えている。そしてそれ以前に中国を支
持する国内の左翼政治勢力の抗議と圧力があるでしょう。そこで政治問題化を恐れ、
国境線を取ってしまった。
 一つの中国の幻想を最初にばら撒いたのは中国人かもしれません。しかし、現在日
本でこれをばら撒いているのは、日本人自身の臆病者心理だということです。

  日本政府は国際法を蹂躙している

 臆病者心理は他人だけでなく自分自身までも騙すものです。臆病者の代表である外
務省中国課のある官僚と話したことがありますが、彼は「我が国は百パーセント台湾
が中国領ではないと言っていない。中国の立場に理解し尊重すると表明している」と
はっきり言いました。恐らく中国に阿ることばかりを考え、政府見解も国際法も忘
れ、そう思ひ込んでの失言でしょう。こうした思い込みは一官僚に留まらず、政府中
枢にもあります。橋本首相以来、政府は中国に、「日中共同宣言によって台湾の独立
は支持しない立場」を再三表明している。先日は川口外相も国会質問で、「『一つの
中国、一つの台湾』という立場は採らない」と強調したが、しかし共同声明には、日
本が台湾の独立に反対するなどと書いていない。日本は台湾を中国領とは承認してい
ないのです。そもそも台湾が独立するか否かは台湾住民が決めるものであって、日本
や中国が干渉することは国際法違反です
 要するに政府は、国際法よりも現実の日中関係を重視したいのです。中国を怒らせ
るなら、国際法など無視したいと考えている。しかしそんなことで日本は、今後どう
やって世界の法秩序を維持して行こうというのか。まして中国など国際法を蹂躙して
でも、台湾を奪い取ろうという無法国家です。そのような国に反対もせず、日本は今
後、どのやうに国際正義を守って行こうというのか。
 中国はいつも「歴史問題」と「台湾問題」の二つを、「日中関係の基礎に関わる重
大な原則問題」だと強調しています。これに対して政府は、「歴史問題」に関しては
史実の検証も行なわず、ただ「反省と謝罪」を繰り返してきました。同様に台湾問題
においても、国際法を棚上げにして、「中国の平和的統一」を希望するメッセージを
送り続け、中国の侵略的野心を激励しているわけです。残念ながら、これが政府の実
体です。それはマスコミにも言えることなのです。

  生命線防衛の世論を形成せよ

 このような状況を打開するには、世論を喚起する以外にありません。まずは「一つ
の中国」の幻想を打破し、何が事実なのかを明らかにしなければなりません。それは
簡単なことです。台湾が中国の領土ではないとの歴史的経緯、法的事実をはっきりさ
せればいいのです。そして政府に対し、「台湾が中国の一部であるか否か」の二者択
一の問題を突きつければいいのです。そもそも政府は、こうした問題で、世論の批判
はないだろうとたかをくくり、安心して好き勝手なことをしているのですから、世論
がそれをやればいいのです。議員やメディアを動かしながら。
 政府には、「歴史問題」では解釈の違いを理由に逃げる余地はあっても、「台湾問
題」ではそれはできません。
 もし生命線である台湾が中国に取られたら、日本は将来どうなるのか。それを考え
たら、この問題がいかに重要であるかがわかります。それを我々は訴えて行かなくて
はならないのです。生命線がどこにあるかも知らなければ、そのような国家に将来は
ありません。「台湾問題」は「歴史問題」と同様、日本人が中国への気兼ねをやめ、
国家として覚醒できるか否かのバロメーターになっているのです。
 私がこのように言うのは、生命線防衛のためだけではありません。そもそも隣国が
中国の侵略の脅威を受けていると言うのに、日本人はなぜそれに無関心でいられる
のか。あるいは政府が侵略者に加担しているのに、なぜそれを放置することができる
のかということです。日本人は惰弱になったものだと思います。
 ましてや台湾は、世界一の親日国家です。しかも台湾人は、かつては同胞です。
今 は別の国になったからと言って、元の同胞にここまで無関心、無情になっていいのか
ということです。私はいつもそのような考へ方でおります。
 私は日本人の勇気と道義の回復を求めるためにも、台湾問題への注目を呼びかけて
行きたいと思います。そしてそのためにはまず、「一つの中国」なる馬鹿馬鹿しい幻 想の払
拭を訴えなくてはならないのです。
 がんばりましょう。ありがとうございました。




『台湾の声』  http://www.emaga.com/info/3407.html

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